マンション売却前のリフォーム・クリーニングは必要?


                マンション売却前のリフォーム・クリーニングは必要?

マンション売却前の大規模なリフォームや設備交換は、原則として先に行う必要はありません。工事費をかけた分だけ成約価格が上がるとは限らないためです。ハウスクリーニングも一律に必要なものではありません。一方、故障や強い汚れなど、売却時に問題になりそうな箇所だけ対応したほうがよい場合もあります。

査定などで住戸の状態を把握したあとは、現状のまま売る場合と比べて、何を改善するために費用を使うのかを考えます。古い・汚れているという理由だけで工事を決めず、専門清掃、部分修理、設備交換、リフォームなどのうち、売却時の問題を改善できる範囲に絞ります。

売却前にどこまで手を入れる?
対応 何を改善するか どんな場合に検討するか
通常の掃除・片付け 住戸の状態を確認しやすくする 販売準備として、まず自分でできる範囲を整える
ハウスクリーニング 自分では落としにくい汚れなどを改善する 通常の掃除では改善しにくい問題が残る場合
修理・部分補修 故障・破損・機能上の不具合を改善する 修理することで、購入希望者が気にしそうな点を改善できる場合
設備交換・リフォーム 内装・設備を大きく更新する 費用や工期をかけても、売却時の弱点を改善できると考えられる場合

現状のまま売る場合と、手を入れてから売る場合を比べる

売却前に最初に考えたいのは、「どこを直すか」ではありません。現在の状態のうち、何が売却時に問題になりそうなのかを確認することです。

通常の生活汚れ、設備の故障、壁紙や床の経年劣化、住戸全体の古さでは、必要な対応が違います。購入希望者が状態を確認しにくいのか、機能上の不具合があるのか、ほかの販売中のマンションと比べて現在の状態のままでは購入候補になりにくいのかを確認します。

状態別にどう考える?
状態 最初に確認すること 考えられる対応 注意点
通常の生活汚れ 自分で掃除できる範囲か 通常の掃除/必要なら専門清掃 専門清掃をすれば成約価格が上がるとは限らない
強い汚れ・臭い 原因と、専門清掃で改善できそうか 部分的なハウスクリーニングなど どの汚れや臭いを改善するために依頼するのかを決める
壁紙・床の経年劣化 売却時にどの程度気にされそうか そのまま売る/部分補修/張り替え 古いという理由だけで一律に張り替えない
設備が古いが使用できる 状態・年式・売却への影響 そのまま売る/必要なら交換を検討 年数だけで新品交換を決めない
設備に不具合がある 不具合の内容と修理費 修理/交換/そのまま売る 不具合を隠さず不動産会社へ伝える
住戸全体が古い そのまま売る場合と改修した場合の違い そのまま売る/リフォーム/必要なら改修案を示す 工事費を成約価格で回収できる前提にしない

室内や共用部分そのものが査定でどう見られるかは、室内や共用部分の状態が査定でどう見られるかで確認できます。

ハウスクリーニングは解決したい問題がある場合に検討する

通常の掃除・片付けと、費用を払って専門業者へ依頼するハウスクリーニングは分けて考えます。

たとえば、通常の掃除では落としにくい水回りの汚れ、長期間蓄積した汚れ、原因を確認したうえで専門清掃によって改善できそうな臭いなどが残っている場合は、ハウスクリーニングで改善できそうか確認してから依頼を検討します。

ただし、ハウスクリーニングを行えば高く売れるというものではありません。どの汚れや臭いを改善するために依頼するのかを明確にしてから、依頼する範囲を決めます。

内覧前の通常の掃除・片付けや住戸の見せ方は、内覧前に行う掃除・片付けなどの準備で確認できます。

不具合は修理・交換・そのまま売る方法を比較する

水漏れ、設備の故障、建具の不具合、破損などがある場合は、まず状態を把握して不動産会社へ伝えます。

不具合があるからといって、売主が必ず修理してから販売するとは限りません。修理費と売却への影響を確認したうえで、修理する、交換する、その状態で売るという方法を比較します。

設備が古くても正常に使用できるのであれば、そのまま売る方法もあります。反対に、機能上の問題が購入を検討するときの大きな支障になりそうなら、修理や交換を検討することになります。

大規模リフォームは古さだけで決めない

キッチン、浴室、洗面台、トイレ、壁・床などをまとめて更新すると、費用も時間も大きくなりやすくなります。

売却前のリフォームが販売方法の1つになる場合はありますが、数百万円かけたから、その分だけ成約価格が上がるとは限りません。

そのまま売る場合とリフォームして売る場合で、購入を検討する人がどう変わりそうかを考えます。あわせて、現在の競合物件と比べたときに、リフォームによって購入希望者が気にしそうな点をどこまで改善できるのかも確認します。

また、売主が先に全面改装すると、壁紙の色、床材、設備の仕様などまで売主側で決めることになります。改修済みの住戸を評価する人がいる一方、購入後に自分好みにリフォームしたい人には、かえって選択肢を狭めることもあります。

工事をせず、購入後の改修方法を示す場合もある

住戸全体が古い場合でも、売主が先に全面リフォームする以外に、購入後にどのような改修ができるかを、リフォーム案や概算見積りなどで示す方法がとられる場合があります。

これはすべてのマンションで必要な方法ではありません。売主自身が最初からリフォーム会社を探して準備すると決まっているわけでもありません。まず、購入後のリフォーム案を示したほうが購入希望者に住戸の使い方をイメージしてもらいやすいか、不動産会社へ確認します。必要であれば、その後に施工会社などへ改修案や概算見積りを相談します。

過去にリフォームを行っている場合は、当時の施工図面、見積書、改修内容がわかる資料などが残っていれば、どこをいつリフォームしたのか説明するときに役立ちます。

リフォームするなら費用だけでなく工期と管理規約も確認する

売却前に工事を行う場合は、工事費だけでなく販売を始めるまでにどの程度時間が必要になるかも確認します。

マンションでは、実際の工事以外にも、次のような準備や手続きが必要になる場合があります。

  • 工事内容と見積りの確認
  • 施工会社の手配
  • 管理規約・使用細則の確認
  • 必要な場合の工事申請・承認
  • 実際の施工

工事そのものは短期間でも、準備や申請を含めると販売開始が遅れることがあります。売却したい時期がある場合は、リフォームによって改善できる点だけでなく、販売開始が遅れる影響も、そのまま売る場合と比べます。

マンションでは工事できる範囲と手続きを確認する

マンションでは、住戸内に見える箇所であっても、売主が自由に工事できるとは限りません。

工事内容によっては、管理規約・使用細則に基づく届出や承認などが必要になる場合があります。また、窓・サッシ・玄関扉などは共用部分との関係があるため、自由に交換できると思い込まず、工事前に管理規約などを確認します。

国土交通省の「マンション標準管理規約」でも、専有部分の修繕などについて、共用部分やほかの専有部分へ影響を与えるおそれがある場合の申請・承認に関する規定例が示されています。

ただし、マンション標準管理規約は個別マンションの管理規約そのものではありません。実際にどのような工事ができるか、どの手続きが必要かは、自分のマンションの管理規約・使用細則を確認し、必要に応じて管理組合・管理会社へ確認します。

築22年のマンションで4つの方法を比べる

たとえば、築22年で壁紙に生活汚れ、床に細かな傷があり、キッチン・浴室は新築時から交換していないマンションを考えます。設備は使用できますが、洗面台の一部には不具合があり、売主は約300万円の水回りリフォームを検討しています。金額・条件は説明用の架空例です。

築22年マンションの販売準備を比較
案 行うこと この方法のねらい 主な注意点
A 現状に近い状態で売る 通常の掃除を行い、現在の状態を伝える 大きな費用や工事期間を増やさず販売を始める 汚れや洗面台の不具合が売却へどの程度影響するか確認する
B 必要箇所だけ対応する 必要な専門清掃と洗面台などの部分修理を検討する 購入希望者が気にしそうな箇所だけ改善する 費用をかける箇所をどこまで絞るか判断する
C 水回りをリフォームする キッチン・浴室などをまとめて更新する 設備の状態や住戸全体の印象を大きく変える 工事費や販売開始の遅れに見合う効果があるか、購入希望者の好みに合うかを確認する
D 工事せず改修案を検討する 購入後のリフォーム案や概算見積りなどを必要に応じて用意する 購入後にどのように変更できるかイメージしやすくする 改修後のイメージを示すことが購入希望者の検討に役立つか確認する

どの方法がよいかは、築年数だけでは決まりません。この例でも、まずそのまま売った場合に何が問題になりそうかを確認し、その問題を改善するために必要な範囲だけ対応します。

発注前に不動産会社へ確認すること

専門清掃やリフォームを発注する前に、「リフォームしたほうが高く売れますか?」だけで終わらせず、次の点を確認します。

  1. 現状のまま売った場合、購入希望者が特に気にしそうなのはどこですか?
  2. この清掃・修理・リフォームを行うと、何もせずそのまま売る場合と比べて何が変わりますか?
  3. 見積りや必要な工事申請・承認などを含めると、販売開始時期にどの程度影響しますか?
  4. 工事をせずに、購入希望者が気にしそうな点を小さくする方法はありますか?

大切なのは、古いから直すのではなく、その費用をかけて何を改善したいのかをはっきりさせることです。そのまま売る方法を基準に、専門清掃、部分修理、設備交換、リフォーム、必要に応じて工事をせず改修方法を示す方法まで比べ、必要な範囲だけ対応します。

まだ査定を受ける前の段階で迷っている場合は、査定前に掃除・修理・リフォームをどこまで行うかを確認してください。


参考資料

  • 国土交通省「マンション標準管理規約」
  • 池田浩一『知りたいことが全部わかる! 不動産の教科書』株式会社ソーテック社
  • 池田浩一『7日でマスター 不動産がおもしろいくらいわかる本』株式会社ソーテック社
  • 山本健司『「全部自分でできる人」になる「不動産の仕事」大全』ソシム株式会社
  • 風戸裕樹『確実に儲けを生み出す 不動産売却の教科書』新流舎株式会社