マンション売却で利益が出たらいくら税金を支払うの?税額の計算方法や控除・特例を解説

- 2021.06.09
- マンションの税金
マンションを売却したらどのくらい税金がかかるのでしょうか。
せっかく高くマンションが売却できたのに、課税によって予定していた資金計画とは違ったといった事態は避けたいものです。
今回は、譲渡所得税の計算方法や、マンション売却時に利用できる控除・特例についてお話しします。
マンション売却の際にかかる費用と、費用の抑え方については、こちらをご覧ください。
マンションを売却したら確定申告しなければいけない?
マンションを売却したら、必ず確定申告をしなければいけないのでしょうか。
確定申告とは、1年間の所得を精算する手続きのことで、企業に勤める一般的な会社員であれば手続きの必要はありません。
しかし、マンションを売却したのであれば、確定申告をしなければならない場合があります。
それはどういった場合なのでしょうか。
譲渡所得が出た場合には、確定申告が必要
マンションを売却して確定申告が必要なケース、それはマンションを売却して利益(譲渡所得)が発生した場合です。
詳しくは後ほど解説しますが、譲渡所得は下記の式で求めることができます。
譲渡所得=売却金額(譲渡収入金額)-(取得費+譲渡費用)
この計算式で譲渡所得がプラスになったら、確定申告しなければなりません。
譲渡損失の場合、確定申告は不要なのか
譲渡所得がマイナスになった状態、つまり譲渡損失が発生した場合は、確定申告は不要です。
しかし、譲渡損失が生じた場合であっても、確定申告をすることで、損益通算や繰越控除を利用できることがあります。
損益通算でその他の所得から譲渡損失分を控除することで税負担を軽減できます。
損益通算でも控除しきれない場合、繰越控除で翌年以降の所得を減算することによって将来支払う税金を減額できます。
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例については、後ほど特例のひとつとして詳しく紹介します。
具体的にいくら税金を支払えばいいの?譲渡所得税の計算を3ステップで解説

譲渡所得税計算の概要
紛らわしいのですが、不動産譲渡所得税はマンションの売却金額にかかる税金ではありません。
マンションの譲渡所得にかかる税金です。
譲渡所得税=譲渡所得×税率
つまり、譲渡所得税を計算するには譲渡所得を算出する必要があります。
マンションの譲渡所得は、「売却金額」から、購入したときにかかった「取得費」や、売却するために支払った手数料といった「売却費用」を差し引いた金額です。
譲渡所得=売却金額(譲渡収入金額)-(取得費+譲渡費用)
この計算式からは、譲渡所得を計算するには「取得費」と「譲渡費用」を算出しなければならないことがわかります。
この内、「取得費」の算定がマンションの譲渡所得税を計算する際に重要になってきます。
以下、マンションの譲渡所得税を計算する方法を、
- ステップ1. 取得費を計算する
- ステップ2. 譲渡所得を計算する
- ステップ3. 譲渡所得税を計算する
の3ステップで解説します。
ステップ1. 取得費を計算する
まずはマンションの取得費を計算しましょう。
取得費はマンションを購入したときの諸費用を合計したものです。
取得費に含まれる費用は以下が代表的です。
- マンションの購入代金
- 購入時にかかった印紙税
- 登録免許税や不動産取得税などの税金
- 仲介手数料
- 設備費 等
この内、「マンションの購入代金」が複雑です。
マンションの購入代金には、土地分の費用と建物分の費用が含まれています。
土地分は、購入した金額がそのまま取得費になるのですが、建物分はそうではありません。
月日が経つにつれて建物は劣化していくでしょう。購入時とは建物自体の価値が変化しています。その経年劣化分を購入時の金額から差し引かなければならないのです。
この金額を減価償却費といいます。
居住用マンションの減価償却費の計算方法は下記です。
※1年未満の端数は、6月以上は1年、6月未満は切り捨て
償却率:木造0.031 軽量鉄骨0.025 鉄筋コンクリート0.015
参照:国税庁「No.2106 定額法と定率法による減価償却(平成19年4月1日以後に取得する場合)」
具体的な計算イメージをつかむために、以下の例で計算してみましょう。
<条件>
鉄筋コンクリートのマンションを経過年数6年で売却した。
取得価格:5,700万円(土地:1,000万円,建物:4,700万円)<計算>
減価償却費=4,700万円×0.9×0.015×6年≒403万円
この計算で減価償却費が算出できました。マンションの取得費を計算してみましょう。
※購入代金以外の取得費用は省略
ステップ2. 譲渡所得を計算する
ステップ1.で取得費を計算できました。続いて、譲渡所得を計算します。
マンションの売却代金から、マンションの取得費(減価償却費を考慮)や購入・売却にともなう諸費用を差し引いた金額が譲渡所得です。
譲渡所得=売却金額(譲渡収入金額)-(取得費+譲渡費用)
右辺の各項をそれぞれ確認しましょう。
譲渡収入金額 | マンション売却にともなう収入 |
---|---|
取得費 | マンションを購入したときの価格や費用(ステップ1. で計算したもの) |
譲渡費用 | マンション売却時にかかった諸費用(仲介手数料や立退料を含む) |
具体的な計算イメージをつかむために、ステップ1. と同様の例で計算してみましょう。
<条件>
鉄筋コンクリートのマンションを経過年数6年で売却した。
購入価格:5,700万円(土地:1,000万円,建物:4,700万円)
売却金額:6,000万円
譲渡費用:150万円<計算>
取得費=5,700万円-403万円=5,297万円(ステップ1. より)
譲渡所得=売却金額-(取得費+譲渡費用)=6,000万円-(5,297万円+150万円)=553万円
ステップ3. 譲渡所得税を計算する
譲渡所得を算出できたら、ようやく譲渡所得税を計算できます。
譲渡所得税=譲渡所得×税率
税率は、マンションの所有期間が5年以下なのか5年超なのかに応じて異なります。
5年以下(短期譲渡所得) | 譲渡所得×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%) |
---|---|
5年超(長期譲渡所得) | 譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%) |
ステップ1. ステップ2. と同様の例で考えてみましょう。
所有期間6年での売却ですので、長期譲渡所得に該当します。税率は20.315%が適用され、譲渡所得税額=譲渡所得×税率=553万円×20.315%≒112万円 により、マンション売却にともなう譲渡所得税額が約112万円になることがわかります。
マンション売却時に利用できる税金の特例とは?

マンション売却時の譲渡所得税の計算方法を紹介してきました。
実際には、税負担を抑えるための種々の特例があります。
- 3,000万円特別控除
- マイホームを売ったときの軽減税率の特例
- 買換え特例
- 譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
- 取得費加算の特例
以上、5つの特例について解説していきます。
3,000万円特別控除
「居住用財産」の定義を満たすマンションを売却する際に、3,000万円特別控除を受けることができます。
「居住用財産」は、マイホームのことです。
売却するのが「投資用マンション(事業用不動産)」でなく、「居住用財産」、つまりマイホームであれば、3,000万円特別控除を適用できます。
譲渡所得税の計算式は、
譲渡所得税=譲渡所得×税率
だということはすでにお伝えしました。
3000万円特別控除を利用すれば、この計算式の譲渡所得を3000万円まで控除することができます。
先ほどと同様の例で考えてみましょう。
前項では、
譲渡所得税=譲渡所得×税率=553万円×20.315%≒112万円
という計算を行いました。3000万円特別控除が適用された場合、譲渡所得を3000万円まで控除できます。
この例では、譲渡所得が553万円ですので、553万控除され、譲渡所得が0円になります。すなわち、
譲渡所得税=0万円×税率=0
により、譲渡所得税額は0円になります。
ただし、この制度を利用すると、売却後に購入する物件に対して住宅ローン控除を適用できなくなります。
住宅ローンの年末残高の1%相当額を所得税や住民税から控除できる制度のことです。参照:国税庁「No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
マンション売却後に新居を購入する計画がある場合、節税効果を比較し、3,000万円特別控除か住宅ローン控除のどちらかを選択しなければなりません。
参照:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
マイホームを売ったときの軽減税率の特例
先ほど、長期譲渡所得にかかる税率は20.315%だとお伝えしました。
所有期間が10年を超える場合、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」を適用できる可能性があります。
この特例を使った際の税額は以下です。
譲渡所得6000万円以下の部分 | 14.21%(所得税10%+復興特別所得税0.21%+住民税4%) |
---|---|
譲渡所得6000万円超の部分 | 20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%) |
適用条件のひとつに、売った家屋や敷地についてマイホームの買換えや交換の特例など他の特例を受けていないことが挙げられます。注意してください。
マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除の特例と軽減税率の特例は、重ねて受けることができます。
参照:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」
買換え特例
買換え特例は、売却するマンションの所有期間が10年を超えていて、売却価格よりも高額で新しい物件に買い替えた場合に利用できる制度です。
買換え特例を用いると、譲渡所得への課税を次回の売却時まで繰り延べることができます。
ただし、趣旨は繰り延べることにあり、課税が軽減されるわけではありません。
新しく購入する物件を将来売却する際に、繰り延べた譲渡所得税が上乗せされます。
参照:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例」
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例は、マンション売却で譲渡損失が出た時に利用できる制度です。
譲渡損失とは、譲渡所得がマイナスになっている状態を指します。
この特例を利用すれば、損失分を他の所得(給与所得、事業所得など)から控除する「損益通算」が可能です。
さらに、譲渡損失がその他の所得よりも多く、損益を相殺しきれない場合は、「繰越控除」することができます。
最長3年間、翌年以降の所得から譲渡損失分を控除できます。
参照:国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」
取得費加算の特例
取得費加算の特例は、相続したマンションを売却する際に利用できる特例です。
相続したマンションを売却する場合、取得費は被相続人がそのマンションを購入したときの金額から求めます。
その際、この特例を用いれば、相続税のうち一定額を取得費に加算することができます。
譲渡所得の計算式は、
譲渡所得=譲渡収入金額-(取得費+譲渡費)
であることをすでに確認しました。
取得費に加算した金額分、譲渡所得が減算されることを意味します。
参照:国税庁「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
まとめ
いかがだったでしょうか。
マンション売却時にともなう譲渡所得税について把握できたと思います。
もしこれからマンション売却を検討しているなら、まずは一括査定を行い、マンションがいくらで売却できそうか確認することをおすすめします。
査定結果を利用して、譲渡所得税を計算し、具体的な資金計画を立ててください。