マンションの査定額はどう決まる?成約事例が価格を左右する


                マンションの査定額はどう決まる?成約事例が価格を左右する

マンションの査定額は、近隣相場だけを見て決めるものではありません。

基本になるのは、同じマンションや周辺の類似マンションで、実際にいくらで売れたかという「成約事例」です。そこから対象マンション・住戸との違いを調整し、さらに現在の競合物件や需要などを考えて査定額を組み立てます。

つまり、査定結果を見るときに重要なのは「4,200万円だった」という金額だけではなく、なぜ4,200万円と判断したのか、その根拠を確認することです。

マンションの査定額は4つの情報から考える

情報 何を見るか 査定での役割
成約事例 実際にいくらで売れたか 価格の基準を作る
類似マンション 立地・築年数・規模など 比較対象を選ぶ
対象マンション・住戸 建物条件、階数、方角、広さなど 比較事例との違いを調整する
市場状況 競合物件、需要、販売状況など 現在売る場合の価格を判断する

マンション査定でよく使われる考え方が「取引事例比較法(事例比較方式)」です。

簡単にいえば、条件の近いマンションの成約事例を探し、その物件と査定する住戸の違いを比較して価格を考える方法です。不動産流通推進センターの「価格査定マニュアル」でも、中古マンションでは同一または類似するマンションの取引事例と比較して価格を求める方法が採用されています。

マンションの査定額ができるまで

STEP1 成約事例・類似物件を探す
実際にいくらで売れた物件なのかを確認する

STEP2 比較する基準価格を考える
査定するマンションに近い事例を選ぶ

STEP3 対象マンション・住戸との違いを調整する
マンションや住戸ごとの条件差を比較する

STEP4 現在の市場状況を反映する
競合物件や需要、販売状況を確認する

査定価格
現在売却する場合の価格を判断する

ポイントは、過去の成約価格がそのまま査定額になるわけではないことです。

比較するのは「できるだけ自宅に近い成約事例」

たとえば東京都内の70㎡のマンションを査定するからといって、東京都内で70㎡なら何でも比較対象にできるわけではありません。

査定では、できるだけ条件が近い取引事例を探します。

  • 同じマンションの過去の成約事例
  • 近隣にある築年数や規模が近いマンション
  • 専有面積や間取りが近い住戸
  • できるだけ最近成約した物件

特に同じマンション内に最近の成約事例があれば、有力な比較材料になります。

不動産会社はREINS(レインズ)などを利用し、現在の売却情報や過去の成約情報を調べます。査定では単に「この地域の坪単価はいくらか」だけを見るのではなく、査定する住戸に近い取引を探すことが重要です。

成約事例と現在の売出物件は意味が違う

査定では、過去の成約事例だけでなく、現在売り出されているマンションも確認します。ただし、この2つは同じ価格情報ではありません。

情報 分かること 査定での見方
過去の成約事例 実際に取引が成立した価格 価格を考える中心的な基準
現在の売出物件 売主が現在提示している価格 競合状況や価格帯を確認する材料
長期間売れていない物件 その価格では買い手がついていない可能性 価格と市場のずれを考える材料

たとえば、同じマンションの住戸が5,000万円で売り出されていても、5,000万円で成約するとは限りません。

売出価格は売主が設定した価格であり、成約価格は買主との交渉を経て実際に取引が成立した価格だからです。

一方で、過去の成約事例だけを見ていても「現在の市場」は分かりません。

そのため、成約事例で価格の土台を作り、現在の売出物件から競合状況を見るという使い分けをします。

4,000万円の成約事例があっても査定額は4,000万円とは限らない

説明用の架空例で考えてみます。

近隣の類似マンションで、70㎡の住戸が4,000万円で成約していたとします。

査定するマンションも70㎡前後だからといって、そのまま4,000万円を査定額にするわけではありません。

たとえば、プラス方向に考えられる条件

  • 比較した住戸より所在階が高い
  • 眺望や日当たりが良い
  • マンションの管理状態が良い

反対に、マイナス方向に考えられる条件

  • 比較したマンションより築年数が古い
  • 室内状態に差がある
  • 管理・修繕面で条件差がある

こうした違いを比較して、成約事例の価格を調整します。

さらに、現在同じマンション内で似た住戸が何件も販売されている場合と、ほとんど売り物件がない場合では、買主から見た競争環境も異なります。

成約事例 4,000万円

マンション・住戸条件を比較

現在の市場状況を確認

査定額を判断

この例は査定計算そのものを再現したものではありません。

理解しておきたいのは、「近くで4,000万円で売れたから、自宅も4,000万円」ではないという点です。

対象マンション・住戸との「違い」を価格に反映する

比較対象が決まったら、その物件と査定するマンションとの違いを確認します。

比較される条件には、たとえば次のようなものがあります。

  • 立地や駅からの距離
  • 築年数や建物の特徴
  • 所在階
  • 方角や眺望
  • 専有面積や間取り
  • 室内の状態
  • マンションの管理・修繕状況

ただし、すべての項目が同じ強さで価格に影響するわけではありません。また、具体的な評価方法も物件や地域によって異なります。

立地・築年数、階数・方角、室内状態、管理状況などが査定にどう影響するかは、それぞれ別の記事で詳しく扱います。

この段階では、査定とは「似た物件を探して終わり」ではなく、その物件と自宅の違いを調整する作業だと理解しておけば十分です。

最後に「今の市場で売るなら」を考える

マンション価格は固定されているものではありません。

同じ住戸でも、売却する時期の市場状況によって買主からの見え方は変わります。

査定時には、たとえば次のような情報も確認されます。

  • 同じマンションや近隣で何戸売り出されているか
  • 似た物件がどの価格帯で販売されているか
  • 売出物件がどの程度の期間で成約しているか
  • その地域やマンションへの需要がどの程度あるか

つまり査定額は、過去のデータだけから機械的に決まる数字ではありません。

「過去の成約実績」+「対象物件との違い」+「現在の市場状況」を組み合わせて考えます。

査定額は「その価格で売れる保証」ではない

査定額には根拠がありますが、その金額で必ず売却できるわけではありません。

査定時点では将来の買主や、その買主がいくらなら購入するかまでは確定していないためです。

実際の売却では、売出価格を決めて販売を開始し、購入希望者との交渉を経て最終的な成約価格が決まります。

そのため、査定額が高い不動産会社ほど高く売ってくれる、とは判断できません。

査定価格・売出価格・成約価格はそれぞれ役割が異なります。ここでは「査定額は売却を保証する金額ではない」という点を押さえておきましょう。

査定結果を受け取ったら金額より「根拠」を確認する

査定結果を受け取ったときは、金額だけを見るのではなく、次の4点を確認すると判断しやすくなります。

  1. どの成約事例を基準にしたのか
  2. その事例と自宅はどこが違うのか
  3. その違いを査定額へどう反映したのか
  4. 現在の競合物件や市場状況をどう判断したのか

たとえば「査定額は4,500万円です」とだけ説明されても、その価格が妥当なのかは判断できません。

一方で、

同じマンションの直近の成約事例と、近隣の類似マンションを比較しています。対象住戸は比較した住戸より所在階では有利ですが、現在は同条件の競合物件が複数あるため、この価格帯と判断しました。

という説明があれば、査定額がどのように作られたのかを確認できます。

宅地建物取引業法でも、不動産会社が媒介契約に際して売買すべき価額や評価額について意見を述べる場合には、その根拠を明らかにすることが求められています。

査定額を見るときに大切なのは「いくらだったか」だけではなく、「なぜその金額なのか」です。

複数の不動産会社から査定を受けた場合も、単純に最も高い査定額を選ぶのではなく、使った成約事例や価格調整の理由、市場の見方まで確認すると、査定結果を比較しやすくなります。


参考資料

  • 国土交通省「不動産情報ライブラリ」
  • e-Gov法令検索「宅地建物取引業法 第34条の2」
  • 公益財団法人 東日本不動産流通機構「REINS(レインズ)よくあるご質問」
  • 公益財団法人 不動産流通推進センター「価格査定マニュアルによる査定方法」
  • 池田浩一『知りたいことが全部わかる! 不動産の教科書』株式会社ソーテック社