マンション売却時の注意点は?売却活動の段階ごとに解説

マンション売却を検討する際、
「いくらでマンション売却できるのか」「マンションを売るときに何が必要なのか」など、疑問が多いでしょう。
マンション売却時の注意点を、売却前から引き渡し後まで段階ごとに解説します。
理解を深めることで、スムーズなマンション売却を目指しましょう。
マンション売却前の注意点
マンション売却をスムーズに進めるためには、入念な準備が必要です。必要なものが多いため、早めに準備を始めましょう。
マンションの現況を確認
まず、マンションの現況を確認しましょう。所有しているマンションの現況を把握して、売却の準備を整えましょう。
以下の3つを確認しましょう。
- 所有されているマンションの権利証または登記識別情報通知書
- 住宅ローンの残高
- 付近のマンション相場
売却の際にも必要な書類ですので、確認しましょう。
マンションの権利証または登記識別情報通知書の確認
マンションなどの不動産を売却する際に、所有権を移転する手続きがあります。その際に、所有しているマンションの権利証か、登記識別情報通知書が必要です。
「権利証」は、所有しているマンションの所有権が自分に移転したことを示す紙の文書です。
2005年に不動産情報をオンライン化する目的で文書から、「登記識別情報」に変わりました。登記識別情報は、12桁のパスワードで不動産と登記名義人ごとに定められます。登記識別情報が書かれた「登記識別情報通知書」がマンションの権利者を示す書類です。
権利証と、登記識別情報通知書は同じ役割です。2005年以前にマンションを購入した場合は権利証を、2005年以降にマンションを購入した場合は、登記識別情報通知書を用意しましょう。
住宅ローンの残高
住宅ローンの残高が残っている場合でも、マンション売却は可能です。
マンションを売却する際に、住宅ローンを完済することで、抵当権を抹消できます。抵当権は、住宅ローンを借りる際に、購入するマンションに金融機関が設定する権利です。抵当権を持つ金融機関は、住宅ローンの返済が滞った際に、マンションを差し押さえできます。
住宅ローンの完済ができない場合、任意売却になります。任意売却は、売却後に住宅ローンが残ってしまう不動産を金融機関の合意を得て売却する方法です。
マンションの売却金で、住宅ローンが完済できるかを確認しましょう。
付近のマンション・土地の相場を把握しましょう
実際にどの程度の金額でマンション売却できるかわからないと、売却に踏み切れません。
付近のマンション相場を把握する方法は、3つあります。
- 複数の不動産会社に査定を依頼する
- レインズや路線価などを調べる
- 物件情報サイトから調べる
複数の不動産会社に査定を依頼する
不動産会社に査定を依頼して、いくらぐらいで売却できるかを把握しましょう。一括査定サイトを利用することで、複数の不動産会社に査定を依頼できます。複数の査定結果をもとに、おおよその売却金額がわかります。
簡単に無料でできますので、利用してみましょう。
土地総合情報システムや路線価などで調べる
土地総合情報システムは、国土交通省が提供する、不動産の取引情報を誰でも見ることができるサイトです。また、国税庁が毎年、路線価を公表します。道路ごとに1m²ごとの単価がわかります。
物件情報サイトから調べる
物件情報サイトからでも、おおまかな相場はわかります。付近のマンションの売り出し価格から相場を把握できます。ただ、売り出し価格と成約価格は異なるため、参考程度に把握しましょう。
マンション売却で必要な書類
マンション売却に必要な書類を紹介します。用意するために手間がかかるものもありますので、早めに用意できるようにしましょう。
用意したほうが高くマンションを売ることにつながる書類もありますので、できる限り用意しましょう。
マンション売却に必要な書類
身分証明書 | 運転免許証やマイナンバーカードなど |
---|---|
印鑑登録証明書および実印 | マンションを購入した際に使用したものと同じものが必要です。印鑑登録証明書は、発行から3カ月以内の有効期限ですので、必要になってから発行しましょう |
登記済権利書または登記識別情報 | 法務局から登記名義人に発行される書類です。 |
固定資産税納税通知書 | 毎年春ごろに市町村(東京23区内在住の方は東京都)から送付されます。再発行には、本人と代理人などに限られ、手数料もかかるため最新のものは保管しておきましょう。 |
キャッシュカードまたは銀行の通帳 | 不動産会社によっては、提携している金融機関があり、利用先が限定されることもあります。 |
マンションの管理規約・管理費・維持費等 | 買主にとって必要な情報です。ない場合は不動産会社が手配します。 |
重要事項に関する調査書 | 細かい注意点や契約内容などを記載した書類です |
マンション売却の際に集めたほうが良い書類
耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書 | 耐震診断やアスベスト調査などを行った場合は関連書類を提出しましょう |
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ローン残高証明書 | 住宅ローンを組んでいる場合は、毎年金融機関から送られます。売却時には、一括返済が求められ、完済を確認するためにも必要です。 |
間取り図・測量図 | 間取りや方位などの情報は買主にとって重要な情報です。法務局で申請でき、ネットから請求したほうが安く済みます。 |
新築時の販売パンフレット | ハウスメーカーが作成した資料には、物件の魅力が最大限書かれています。手元にあれば、販売活動する際に有効です。 |
すぐに用意できるものから、用意するために手間がかかるものもあります。
時間に余裕があるときに用意しておくと安心です。
マンション売却でかかる費用
マンション売却の際にも、費用がかかります。マンション売却の際にかかる費用の種類は、次の5つです。
- 仲介手数料
- 住宅ローン費用
- 税金
- 引っ越し費用
- 新居の購入費用
マンション売却の際にかかる費用の詳しい解説は、こちらを参考にしてください。
仲介手数料
不動産会社はマンションを売却するためにさまざまなサポートをしてくれます。売却を成立させてくれた不動産会社には報酬として手数料を支払います。それを仲介手数料といいます。
仲介手数料には、宅地建物取引業法で売買価格に応じた限度額が定められています。
以下は、限度額の簡易計算方法です。
売買価格 | 限度額 |
---|---|
売買価格200万円以下 | 売買価格×5% |
売買価格200万円超~400万円以下 | 売買価格×4%+2万円 |
売買価格400万円超 | 売買価格×3%+6万円 |
2,000万円(税抜)×3%+6万円=66万円(+消費税)
ただし、上記はあくまでも限度額であり、必ずしも上記金額が発生するというわけではありません。業務内容に照らし合わせて仲介手数料が高いと思う場合は、不動産会社と協議することも可能です。
住宅ローン費用
売却するマンションに住宅ローンの残債がある場合、売却する際に残債を一括返済する必要があります。これに関して、以下の費用がかかる場合があります。
- 住宅ローンの全額を繰上返済する際にかかる手数料
- 司法書士報酬
ほとんどの金融機関では、一括返済に対して手数料がかかるため、あらかじめ確認するようにしましょう。
住宅ローン完済後には、マンションに設定された抵当権を抹消します。 登記手続きでは、司法書士に依頼する方法もあります。その際に、司法書士報酬として、1~2万円程度の費用が発生します。
税金
マンション売却時には、以下のような税金が発生します。
- 所得税
- 住民税
- 印紙税
- 登録免許税
マンションの売却代金から、経費に計上できるいくつかの項目を差し引いて計算した所得を、譲渡所得といいます。所得税および住民税は、この譲渡所得に対して課せられる税金です。
譲渡所得は、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」の2種類あります。
短期譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在でマンションの所有期間が5の場合で、譲渡所得の39%が所得税および住民税として課税されます。
長期譲渡所得とは、譲渡した年の1月1日現在でマンションの所有期間が5の場合で、譲渡所得の20%が所得税および住民税として課税されます。
なお、税額は確定申告によって決まるため、売却した翌年に支払いが発生します。
印紙税は買主と締結する売買契約書にかかる税金です。印紙税は、収入印紙の購入により納付できます。契約書に貼付することで効力をもち、納税額は、契約書に記載された金額に応じて定められています。
売買契約金額 | 印紙税額(円) |
---|---|
10万円を超え 50万円以下のもの | 200 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 500 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 1,000 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 5,000 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 10,000 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 30,000 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 60,000 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 160,000 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 320,000 |
50億円を超えるもの | 480,000 |
なお、収入印紙が貼られていない場合、契約自体は有効になりますが、過多税として印紙税の額とその2倍に相当する金額の合計、つまり印紙税額の3倍が徴収されることがあるので注意してください。
登録免許税は、登記に関する税金です。法務局で管理される登記簿の内容を変更する際に、不動産が課税されます。
引っ越し費用
マンションを売却して新居に引っ越すための費用がかかります。
引っ越しをする時期、人数、距離によって引っ越し費用は変動します。例えば4人家族で3月・4月の引っ越しシーズンに引っ越す場合、10~15万円かかります。
新居の購入費用
現住居を売却し、新居を購入し住み替える場合、新居の購入費用も必要です。
現住居の住宅ローンを売却資金で完済し、新しく住宅ローンを組んで新居を購入できます。また、金融機関の中には、現住居の住宅ローンの残債と新居の購入資金のどちらも借り入れが可能な住み替えローンがあります。住み替えローンは通常の住宅ローンに比べて審査が厳しいです。現在のローン状況を確認して金融機関に相談しましょう。
マンション売却期間中の注意点を紹介
マンションを高く売るためには、売却期間中の活動内容はとても重要です。マンション売却期間中の注意点を紹介します。
- 内覧のために部屋をきれいにする
- 自分に合った媒介契約を結ぶ
- 信頼できる不動産会社を選ぶ
それぞれの注意点について詳しく解説します。
内覧のために部屋をきれいにする
内覧はマンション売却にとって重要なポイントです。内覧時に物件をよく見せることで、購入希望者の購入意欲にも影響があります。
内覧前に部屋をきれいに掃除しましょう。部屋の清潔感は、購入希望者に好印象を与えられます。汚れやすい水回りは、特にきれいにしましょう。
また、より部屋を魅力的に見せる方法として、ホームステージングという、プロにインテリアコーディネートしてもらう方法もあります。
壁紙やフローリングに目立つ傷や汚れは、補修することをお勧めします。補修をしなくてもある程度きれいな状態であれば、リフォームは必要ありません。リフォームにかかった費用を上乗せして売却しようとしても、相場よりも値段が上がってしまい、売れにくくなってしまいます。
ほかに部屋の印象を上げる方法として、リノベーションがあります。リノベーションすることで、内覧時の印象は良くなります。しかし、中古マンションを購入しリノベーションを施す予定の買主もいます。
もしリフォームやリノベーションを検討する場合は、一度不動産会社と相談してから決めましょう。プロの視点から物件にあった方法を提案してもらえます。
自分に合った媒介契約を結ぶ
不動産会社にマンションの販売活動を依頼するためには、媒介契約が必要です。媒介契約は、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類あります。
それぞれの違いは以下の表のとおりです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数の不動産会社と契約 | ○ | × | × |
売主が自身で見つけた買主との契約 | ○ | ○ | × |
レインズへの登録義務(※) | 任意 | 7営業日以内 | 5営業日以内 |
売主への販売活動報告 | 任意 | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
契約の有効期限 | 制限なし | 3カ月以内 |
※レインズ…国土交通省が提供する、全国の不動産情報を共有するネットワークシステム
一般媒介契約は、複数の不動産会社と契約できるため、買主を見つける機会が広がります。しかし、不動産会社からすると、一般媒介契約は複数の不動産会社に依頼ができることから、自社で売却が決まるとは限らないため、積極的な売却活動を行いにくいという可能性もあります。
専任媒介契約・専属専任媒介契約は、販売活動報告を定期的に得られるため、不動産会社に販売活動を任せることができます。また、一般媒介契約に比べて、積極的に売却活動を行ってもらえます。その理由として、不動産会社にとって、売主が他社と契約することができないため、仲介手数料を得やすいからです。
それぞれのケースにあった媒介契約を結ぶことで、マンションを高く売却することにつながります。
信頼できる不動産会社を選ぶ
マンション売却では、不動産会社選びが大切です。
おすすめの不動産会社の特徴を挙げます。
- マンション売却を得意としている
- 査定価格や話している内容に根拠がある
それぞれについて詳しく解説します。
マンション売却を得意としている
不動産会社によって得意とする物件の種別や分野が異なります。マンションを高く売却するノウハウの持っている不動産会社を選びましょう。不動産会社の売買実績やホームページを確認して、中古マンションの売却が得意どうかを判断できます。
査定価格や話している内容に根拠がある
一般的にマンション売却を検討する際、複数の不動産会社に、査定を依頼します。
査定結果の根拠がはっきりとしていない不動産会社は、信頼できません。
また、担当営業との相性も大事です。担当営業の話している内容に根拠があるかを確認し、信頼できるかを判断しましょう。
マンションの売買契約における注意点
マンションの売却活動をして買主が決まると、買主と売主で「売買契約」を結びます。
一度、契約を結ぶと解除することが難しいため、きちんと売買契約の内容と注意点を確認したうえで、契約しましょう。
売買契約の流れと、売買契約後に発生する可能性がある瑕疵担保責任について解説していきます。
売買契約の流れ
売買契約を結ぶ前に、買主に対して不動産会社が「重要事項説明書」を説明します。
マンションの権利関係やマンションの管理状態、契約解除に関する事項などが書かれています。
説明が終わると、売買契約を結びます。その際に、「売買契約書」、「物件状況報告書」、「設備表」の読み合わせを行います。その後、売主、買主が署名・捺印を行い、契約成立です。
この際に、手付金が買主から売主に渡されます。手付金は、売買代金の一部に充当されます。
売買契約後の瑕疵担保責任・契約不適合責任に注意
マンション売却後に、住まいに隠れた傷や欠損が見つかった場合、買主から売主にその責任を追及することができるのが「瑕疵担保責任」です。2020年4月に民法が改正され、瑕疵担保責任から「契約不適合責任」に改正されました。
買主が、瑕疵を発見し売主に責任を追及する責任を負うことは、変わりません。しかし、民法改正前では、瑕疵が生じた際に売買契約の解除と損害賠償のいずれかを選択するのみでした。
改正後では、さらに「追完請求」と「代金減額請求」が加わります。
それぞれの説明は以下の表のとおりです。
契約の解除 | 契約内容に合致する不動産でない場合、最終的に契約を解除できます。契約を解除する前に、追完請求や代金減額請求を先に行います。 |
---|---|
損害賠償請求 | 契約内容と違ったことによって受けた損害への賠償を請求します。民法改正後、履行利益まで損害賠償請求の範囲に入りました。
履行利益は、その不動産を転売して得られたであろう利益や営業利益が含まれます。 |
追完請求 | 契約の内容と合致しない箇所を直してもらうことです。 |
代金減額請求 | 追完請求によって直してもらえない場合に、代金を減額してもらうことを請求します。 |
売買契約書に記載があれば、契約不適合責任を問われません。事前にマンションの状況を不動産会社にきちんと伝え、売買契約書に記載してもらいましょう。
売買契約書の中に、契約不適合責任についての記載があります。契約不適合責任が問われた際の対応が書かれますので、しっかりと確認しましょう。
マンション引き渡し後の注意点
マンションを買主に引き渡した後も、やることはあります。
- マンション管理組合への報告
- 不動産取引後の確定申告
マンション引き渡し後の注意点を解説します。
マンション管理組合への報告を忘れずにする
マンションの引き渡しをした後に、マンション管理組合に組合員としての資格を喪失したことを速やかに報告しましょう。管理組合への報告を忘れると、マンション売却後も管理費や修繕積立金が引き落とされてしまいます。
不動産の取引後に確定申告を行う
マンションの売却後、確定申告を行います。
マンション売却後に課税対象となる、譲渡所得を計算しましょう。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却代金 ― 売却にかかった諸費用 ― 特別控除(自宅を売却した際は、3,000万円)
譲渡所得がプラスの場合、給与以外の所得になるため、会社員でも確定申告により、別途申告・納税が必要です。確定申告を忘れた場合、故意にしなかった場合は、税務署から問い合わせと調査が入ります。延滞税という罰則がありますので、忘れずに確定申告をしましょう。
譲渡所得がマイナスの場合、所得が減るため、所得税や住民税が減税されます。確定申告の際に、申請して節税しましょう。
マンション売却後には、忘れずに確定申告をしましょう。
マンション売却の際は複数の不動産会社に相談を
マンションを高く売却するためには、不動産会社選びも大切です。マンション売却が専門外の不動産会社に依頼してしまうと、売却活動の期間が長くなり、売却金額が予想よりも低くなってしまうことがあります。
マンション売却に適した不動産会社を選びましょう。
不動産会社選びには、一括査定サイトを用い、複数の不動産会社に査定を依頼・相談をしましょう。物件の簡単な情報を入力するだけで、一括で査定の依頼と相談ができます。
ぜひ利用しましょう。