共有名義のマンションは売却できる?共有者の同意と進め方
- 2026.09.11
- 状況別マンション売却
共有名義だから、マンションを売却できないわけではありません。夫婦で購入したマンションや、相続によって兄弟姉妹等の共有になったマンション、親子で共有しているマンションなどでも、共有者全員がマンション全体の売却に同意し、価格や売却時期についても話がまとまれば、一般的な中古マンションと同じように売却を進められます。
一方、持分を多く持つ共有者が1人でマンション全体を売却したり、共有者の過半数だけで売却したりできるわけではありません。最初に見るべきなのは「なぜ共有名義になったか」ではなく、現在の共有者は誰で、全員がマンション全体を売ることに同意しているかです。
現在の状況によって、次にすることが変わります。
| 現在の状況 | 次にすること |
|---|---|
| 共有者全員がマンション全体の売却に同意している | 売り出す価格や売却したい時期、連絡方法などを共有者同士で話し合い、査定や不動産会社選びへ進む |
| 売却には賛成しているが、価格や時期について意見が違う | 査定価格等も材料にしながら、どの程度の価格なら売るのか、いつ頃までに売りたいのかを話し合う |
| 共有者の1人がまだ売却するか決めていない | マンション全体の売却を進めるまえに、売ることに同意するか確認する |
| 共有者の1人が売却に反対している | マンション全体の売却はそのまま進めず、共有者間で今後の対応を考える |
| 共有者の1人が遠方等で契約に参加しにくい | 本人確認や代理等の方法を不動産会社・司法書士等へ早めに確認する |
まず登記上の共有者と持分を確認する
売却の話を進めるまえに、登記事項証明書等で現在の所有者を確認します。見るのは、誰が共有者として登記されているか、それぞれの持分がどのくらいかです。登記上の住所や氏名が現在と異なる場合も、不動産会社や司法書士へ伝えておきます。
ここで注意したいのが、持分の大きさとマンション全体を売却できるかは別だという点です。たとえば2人が1/2ずつ所有している場合だけでなく、一方が9/10、もう一方が1/10を所有している場合でも、持分が多い共有者だけの判断でマンション全体を売ることはできません。
共有物全体の売却は、持分の過半数で決める管理行為とは異なり、原則として共有者全員の同意が必要です。したがって、「過半数の持分があるから売れる」「自分の持分が最も多いから売れる」という考え方ではなく、登記上の共有者全員がマンション全体の売却に同意しているかを先に確かめます。
マンション全体を売るなら共有者全員で売却条件を話し合う
全員が「売ること」には賛成していても、それだけで販売を円滑に進められるとは限りません。実際の売却では、売り出し価格や価格変更、購入申込への対応など、重要な売却条件について共有者間で方針を決めておく必要があります。
少なくとも、次のような点は販売前から話しておくと進めやすくなります。
- マンション全体を売却すること
- 査定結果を見たうえで、どの程度の価格で売り出したいか
- どこまでなら価格を下げられるか
- いつ頃までに売却したいか
- 希望する引き渡し時期
- どの不動産会社へ依頼するか
- 不動産会社との日常的な連絡窓口を誰にするか
- 査定結果や販売状況を共有者間でどう共有するか
たとえば、一方は「多少安くても3か月以内に売りたい」、もう一方は「時間がかかっても価格を下げたくない」と考えていると、購入申込を受けた段階で判断が止まりやすくなります。売却開始時にすべてを細かく決める必要はありませんが、価格や売却時期について、共有者同士の希望が大きく食い違っていないかは見ておいたほうがよいでしょう。
共有者だけで価格や売却時期を話し合っても意見がまとまりにくい場合は、不動産会社から共有者全員へ査定価格やその根拠、現在の市場状況、想定される販売期間等を説明してもらう方法もあります。全員が同じ情報をもとに検討できるようにすると、「高すぎる」「安すぎる」といった感覚だけの話し合いになりにくくなります。
不動産会社が共有者に代わって売却を決めたり、反対する共有者へ同意を強制したりすることはできません。ただし、それぞれの希望価格や売却時期の違いを整理し、現在の相場を踏まえると、どの程度の価格や時期なら売却を進めやすいか説明してもらうことはできます。共有者間の対立が法的な紛争になっている場合は、不動産会社だけで解決しようとせず、必要に応じて弁護士等へ相談します。
査定を複数社へ依頼する場合も、1人だけが査定価格を把握するのではなく、価格だけでなくその根拠まで共有しておくと話し合いやすくなります。査定結果を見るときは、複数社の査定価格と、その価格になった根拠を比較する方法も確認できます。
販売中に価格変更を提案された場合や購入申込が入った場合も同様です。不動産会社から連絡を受けた1人が独断で決めるのではなく、価格や引き渡し条件等を共有者へ伝えてから返答します。購入申込を受けたあとに何を比較するかは、購入申込の価格・資金・引き渡し条件を比較するときの考え方で確認できます。
連絡窓口を1人にしても売主が1人になるわけではない
共有者が複数いると、不動産会社から全員へ毎回同じ連絡をすると話が複雑になるため、日常的な連絡窓口を共有者の1人へまとめることがあります。
ただし、「不動産会社との連絡担当者」と「マンションの売主」は別です。窓口を1人にしただけで、その人にほかの共有者の売却条件を決めたり、売買契約を代理したりする権限まで与えられるわけではありません。代理人として手続きを任せる場合は、共有者本人の意思を確認したうえで、委任する権限の範囲を明確にします。
査定結果、販売状況、価格変更の提案、購入申込の内容等、売却に関わる重要な情報は共有者へ伝わるようにしておきます。契約や決済に向けては、各共有者の本人確認や売却意思の確認が必要になります。
共有者が遠方に住んでいるなど、全員が同じ場所へ集まることが難しい場合には、代理人による手続き等が可能なこともあります。ただし、代理人に任せられる手続きや必要書類は、契約・決済の方法などによって異なるため、自己判断せず、売買契約のまえに不動産会社や司法書士へ確認してください。通常の売買契約から決済までの手続きについては、売買契約後から決済・引き渡しまでに売主が行う手続きで確認できます。
共有者の1人が売却に同意しない場合
共有者の1人がマンション全体の売却に反対している場合は、そのままマンション全体の売却を進めることはできません。持分の過半数を持つ共有者が賛成している場合でも同じです。
まず見るのは、反対している理由が価格なのか、時期なのか、それともマンションを売却すること自体なのかです。「売ることには賛成だが希望価格が違う」のであれば、価格について話し合う余地があります。一方、「マンション自体を売りたくない」という共有者がいるなら、マンション全体の売却はそのまま進められません。
自分の共有持分だけを売ることはマンション全体の売却とは別
自分が所有する共有持分そのものを譲渡することと、共有者全員でマンション全体を売却することは別です。自分の共有持分だけを第三者へ譲渡することはできますが、その買主はほかの共有者とマンションを共有する立場になります。
共有者の1人がマンションを所有し続けたい場合には、その共有者がほかの共有者の持分を買い取り、単独所有にする方法も考えられます。ただし、持分の価格や買い取るための資金、税務等を別に検討する必要があるため、マンション全体を第三者へ売却する場合とは分けて考えます。
共有持分だけの売却も、一般の中古マンション1戸を売却する場合とは買主や価格の考え方が異なります。共有者が反対しているからといって、すぐに「持分だけ売ればよい」と考えるものではありません。共有者間の対立が強く、マンション全体の売却へ進められない場合は、必要に応じて弁護士等へ相談してください。
住宅ローンが残っているなら持分とローンを別々に確認する
夫婦共有のマンションでは、所有者が2人でも、住宅ローンを誰が借り、どのように返済する契約になっているかは別です。ペアローン、連帯債務、一方だけが債務者になっているケースなどがあります。
登記上の所有持分と、住宅ローンを誰がどのように負担しているかは別々に確認します。持分が1/2ずつだから住宅ローン残高も半分ずつとは限らず、反対にローンを多く負担しているから持分も必ず多いとは限りません。
売却するときは、共有者全員がマンションを売ることに同意しているかとは別に、売却代金等で住宅ローンを完済して抵当権を抹消できるかを見る必要があります。残債がある場合は、住宅ローン残債と売却見込み額から、売却代金で住宅ローンを完済できるか確認する方法を先に確認すると判断しやすくなります。
譲渡所得は持分に応じて計算し、ローン返済や共有者間の精算は別に考える
共有不動産を売却した場合、税務上の譲渡所得は各共有者の所有権持分に応じて計算するのが基本です。たとえば持分が70%と30%であれば、それぞれが自分の持分に対応する譲渡価額をもとに譲渡所得を計算します。
一方、住宅ローンの返済や共有者間の立替金等を最終的にどう精算するかは、譲渡所得の計算とは分けて考える必要があります。「ローンを多く返したから、売却代金もその割合で受け取ればよい」と単純に決められるとは限りません。
登記上の持分と異なる割合で売却代金を受け取る予定がある場合は、その差に合理的な精算理由があるか、贈与税等の問題が生じないかを、実行するまえに税務署や税理士等へ確認してください。
売却価格から住宅ローン残債・売却費用・税金を差し引いて、実際に利用できる資金を概算するときは、マンション売却後に利用できる資金を計算する方法を利用できます。譲渡所得など売却時の税金については、マンション売却で税金がかかるか確認する方法で確認してください。
共有者全員の同意がまとまったらマンション売却へ進む
共有名義のマンションでも、登記上の共有者が明確で、共有者全員がマンション全体の売却に同意し、売り出す価格や売却時期についても話がまとまれば、売却手続きへ進めます。
反対に、共有者の1人がマンションを売ること自体に同意していない場合は、まず共有者同士で、マンションを売るのかどうかを決める必要があります。
共有者全員で売却する方向が決まり、現在の相場や査定価格がまだわからない場合は、査定価格だけでなく、その根拠も共有者全員で確認したうえで、売り出す価格や売却時期を話し合うと進めやすくなります。そこから先の一般的な手順は、相場確認から査定・販売・売買契約・引き渡しまでのマンション売却の流れで確認できます。
参考資料
- e-Gov法令検索「民法」
- 法務省「共有制度の見直し」
- 国税庁「No.3308 共有のマイホームを売ったとき」
- 池田浩一『知りたいことが全部わかる! 不動産の教科書』ソーテック社